己との戦い

5月に入り、初夏の陽気が続いていましたが、今日は朝から久しぶりの雨となりました。
私たちにとってこの雨は、ある人との別れを思わせるものでした。
「雨が語る別れに、感謝と静かなエールを重ねて」――そんな想いを込めて、その方へメッセージを送りました。
これは私の職場での出来事ではありますが、どんな場面であっても別れは寂しいものです。
まるでその気持ちを映し出すかのような空模様でしたが、それでもきっと彼女は、どんな天気でも〝らしさ〟を失わず、周囲を明るくしていることでしょう。

さて、ボート部の話題に移ります。

めっきり更新頻度も落ちた中で、変わらず読んでいただけている方には、いつもながら感謝の気持ちでいっぱいです。

先週末には例年より一足早く、国スポ神奈川県選考会が相模湖漕艇場で開催されました。

今年は相模湖の水不足も深刻で、ここを拠点に活動されている団体は春先から苦労を強いられていたと聞いています。

そして年度が替わっても水位は戻らず、ギリギリまで別会場での開催が検討されていましたが、当週にようやく例年通り相模湖での開催が本決定しました。

勝手の違う場所での開催には不安もありましたが、慣れ親しんだこの会場で実施されることに、正直ほっと胸をなで下ろしたのが本音です。


昨年、淡路と白川で挑んだこの選考会。あと一歩のところで代表の座を逃し、今年は白川のみでの挑戦となりましたが、「今年こそは」という思いは、本人だけでなく私自身も強く感じていました。

しかし、エントリーを見て思わず息を呑みました。昨年以上にレベルの高いメンバーが揃い、決勝進出すら容易ではないと感じさせる顔ぶれであったからです。

それでも今年は、前日の配艇練習で使用した艇をそのまま使えるという条件があり、準備面では落ち着いて当日に臨むことができました。この点は非常に大きかったと感じています。

昨年は限られた時間の中で白川、淡路の2艇をひとりでリギングし送り出していましたが、今年は前日のうちに余裕をもって準備できたことで、私自身は心穏やかに当日を迎えることができました。


一方で、白川本人はこの強敵揃いということもあり、いつもより険しい表情で、かつ、応援者もいない寂しさもあってか、普段のようなテンションは見られませんでした。

その予選レース。上位3艇が決勝進出という展開を想定しつつも、大学トップクラスの選手に加え、ピンクブレードの現役選手2名、OBである社会人選手1名と、まったく気の抜けない状況でした。

緊張した面持ちの彼を送り出し、陸上から元さんと見守る中、なんとか上位でフィニッシュする姿を確認し、まずは安堵しました。

別の場所で観戦されていたお母様からは「残念でした…」との連絡もありましたが、「大丈夫、上がっていますよ」と伝え、そんな白川を迎え入れました。

本人も結果には安堵している様子で、もちろん決勝が本番であることは理解していましたが、昨年最後の一枠を譲った相手に予選で先着できたことは、確かな成長でもありました。


そして迎えた決勝。

想像通り、錚々たるメンバーが顔をそろえ、この中で上位3つに入ることの厳しさは明らかでした。

ここ2年苦杯をなめている代表常連の選手に加え、今年新たに成年種目に上がってきた実績者、さらに過去に同様の実績を持ちながら社会人として復帰した異色の選手。

今の実力を測るには申し分ない舞台であり、ここで結果を出せなければ本番の権利獲得も難しいという状況でした。


相模湖のコースは観戦しづらく、直線的に着順が把握しにくい難しさがありますが、それでも白川が上位争いに絡みきれていないことは一目で分かりました。

3・4位争いはまさに紙一重。それでもそこに加わることは叶わず、最終的に5着でのフィニッシュとなりました。

昨年と同じ順位ではありますが、今年はリベンジを果たして激戦を勝ち抜く力を見せた一方で、決勝では不完全燃焼のまま終わってしまったのです。


レース後、白川は決勝では予選時にはなかった風の影響を強く受け、スタートから500mにかけて厳しいアゲインストだったと話していました。

その影響もあり、前半でミスが重なり、上位陣に離される展開となり、その差を最後まで埋めることができなかったようです。

気持ちが切れてしまった――そう感じさせる内容ではありましたが、こうした展開はボート競技において珍しいものではありません。


とはいえ、どんな展開になろうとも、最後まで自分のベストを尽くすこと。それは必ず次につながります。

戸田レガッタで見せた後半型のレースとの対比も含め、戦い方の幅や難しさを改めて突きつけられる結果となりました。

課題は明確にあります。

しかし、それを「課題」として本当に受け止めるかどうかは別の話です。

人は課題を理解していても、そこに踏み込むには覚悟や勇気が必要になります。

エルゴの数値も同様で、「縮めたい」ではなく「縮める」という意思が求められます。

改めて、ボート競技とは強い気持ちを試されるスポーツだと感じます。

スタートに立てば、逃げ場はなく、相手との戦いの前にまず己との戦いが待っています。

クルーであれば自分ひとりにかかるプレッシャーはいくらか軽減されるかもしれませんが、シングルスカルは特に己との戦いが大きな意味を持ちます。


そんなシングルスカル種目で、今年は白川と菜名ちゃんが全日本選手権に挑みます。

菜名ちゃんにとっては、青学としても久々の女子種目出場となります。少なくとも私が現役からこの監督を通じて一度も見ていない新しい世界です。

日本最高峰の舞台。強豪がひしめく厳しい戦いです。

それでも、その場に立てること、そしてその経験は必ず今後に活きていきます。

一つでも多くの課題を持ち帰り、それを乗り越えていくことを期待したいと思います。


だからこそ、臆することなく挑戦してほしい。

我々は、いつだって挑戦者なのですから。

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