夢に見た最終日の景色

2026年のインカレが幕を閉じました。

数年ぶりに8月開催へ戻った真夏の決戦で、当部から出漕した男子シングルスカル・白川海生(3年・主将)、女子シングルスカル・重信菜名(2年)の両選手が、当部として快挙とも言えるアベックでの最終日進出、そして見事な入賞を果たしてくれました。

2011年8月に監督の依頼を受け、2012年から本格的に活動を再開したので、そこから数えれば、すでに15年という年月が経っていました。部員すらいないゼロからのスタートだったため、長い時間を過ごしてきたことすら最近では忘れかけていましたが、ここまでの道のりは本当に長いものでした。

そしてこのインカレという、大学ボート界だけでなく当部にとって最大の目標となる舞台で、最終日のファイナルレース進出を決めたこと。さらに入賞という結果は、私が学生として最後の年に成し遂げた2003年以来の出来事です。

インカレへの思いや、現役当時から監督に至るまでの思いは、このブログでも何度も綴ってきました。高い壁に跳ね返され続け、悔しさを味わってきた当時の部員たち。そして関係者からの期待に応えられず、歯がゆい思いで続けてきたこの数年。そんな私の独りよがりとも言える目標や夢を、二人は見事に叶えてくれました。

夢に見た最終日の景色はやはり格別なものでした。それはきっとその場にいた当部の関係者は皆、同じ思いをしていたのではないでしょうか。

 

まずは二人のここまでの努力に心から敬意を表します。そして、彼らを支えてくれた他の部員たち、これまで目指す舞台に届かず共に悔しい涙を流してきた先輩たち、志半ばで去った元部員たち、コーチ陣、保護者、OB・OGの皆さま。本当にありがとうございます。

多くの関係者に支えられて過ごしてきたこの監督生活で、ようやく23年という空白の期間を経て悲願を達成できたことに、心より感謝申し上げます。

この快挙は二人の並々ならぬ努力、そして多くの人の支えがあってこそ実現できたものです。ですから私自身の存在など、ほんのわずか影響したかどうかという程度でしょう。それでも自分事のように喜び、感動し、涙したのは、純粋にこの部を応援している気持ちがあるからだと自負しています。

 

祝福の声は今なお、さまざまなところから届いています。大会期間中も二人の快進撃に注目が集まり、最終日の解説でも話題に取り上げていただきました。決して強豪でもなく、大人数の部でもない中で、堂々とファイナリストを生んだのですから、やってやれないことはないのだと改めて実感しました。

23年前、確かに私はこの舞台でメダルを取りました。しかしそれは、メダル欲しさに競技を8年続け、ようやくたどり着いた結果でした。それほどの時間を要した私とは違い、白川は競技歴2年3か月、菜名ちゃんに至っては1年3か月でここまでたどり着いたのですから、尊敬の念すら抱きます。

競技を離れ、監督として戻ってきた際、未経験者を育成してこの舞台で勝つことができるのか。それが一番の疑問でした。フィジカルやポテンシャルの高い逸材はこれまでもいましたが、結果に結びつけることはできませんでした。

しかし、努力を積み重ね、受け継がれた当部の伝統や思いの先に今の部員たちがいて、その中で二人の快挙が生まれたのだと今は思います。ですから、自分事とは言いましたが、私とともに歩んできてくれた多くの元部員や、私を信じ支えてくれた関係者の皆さまに、今は感謝の気持ちしかありません。

今年は部を取り巻く環境の中で、さまざまな出来事がありました。もちろん今年に限らず、毎年のように方針や考えの相違から離れていく者を見てきましたが、今年は特にそれが堪えました。このまま監督として続けていくことも考えさせられるほど、私の中で何かが変わりました。

 

それでもこの大会を通じて、二人の活躍や、それを支える部員たち、スタッフの姿勢や行動を目の当たりにし、「良いチームだな」と改めて感じる場面が多々ありました。願わくば、この先も今以上の活躍が期待されるこの部を見続けたい思いはあります。

しかし、長く続けることが必ずしも良いとは言い切れない思いもあります。私が監督に就任した当時は新参者の若手監督でしたが、戸田の大学ボート部の監督陣も月日の経過とともに入れ替わり、この15年で継続されている方は数えるほどになりました。それでも、いつ誰にバトンを渡してもいいくらいに皆が成長しており、新しい風こそ必要ではないかと今も自問自答しています。

今年の全日本選手権では、元さんに紹介された某大学の監督と話す機会がありました。監督歴は私とほぼ同じで、就任当時は部員数もままならなかったとのこと。しかしその大学は15年の間にめきめきと頭角を現し、今では日本一と言えるほどの部員数を誇り、屈指の実力校として君臨しています。

これが人間としての器の違いなのだろう……と比べれば比べるほど、みじめな思いもしました。それでも、自分が注いだ情熱だけには自信があります。この部をなんとか再起させたいという一心でやってきたのですから、今年のインカレはその答え合わせを二人がしてくれたのかもしれません。

 

何度も言いますが、主役は部員です。ここで活躍し、結果を出したのも言うまでもなく選手たちです。自分たちが勝ちたい気持ちはもちろん、この大学名を背負い、ボート部への思いを持って行動してくれた結果でもあるのですから、それが何より嬉しいことなのです。

私が引き受けた当時、そこに思いを持った者は誰一人いませんでした。実力や結果に関わらず、思いを持って行動し、活動してほしい。それだけが監督としての本音です。

この長い戦いを経て、ようやくこれまでの思いが報われた気がしました。

私は準決勝を現地で観戦することはできませんでした。その日、東京へ戻る車中で、何気なく聴いていた曲とともに涙が流れました。理由は分かりませんが、この長い期間の苦労や困難が浄化されたのかもしれません。昨年、いやこれまでの悔しさではなく、未来への期待が高まる嬉しさだったのかもしれません。

 

今年は創部60周年です。それをあえて口にはしていませんでしたが、60年間続いてきたこの歴史は、決して私や今の部員だけの功績ではありません。ここに携わる皆さま一人ひとりがいてこそのものです。

この先もずっと続いていくために、皆さまのお力をこれからも貸してください。青山学院大学ボート部が多くの方にとって感動や勇気を与えられる存在であるように。

 

2026年9月1日
青山学院大学ボート部
監督 須田 祐樹

 

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