固唾をのんで結果を待つ

今季最終戦となるこの日は前日の天気から一転して、気温も下がり、今にも降りだしそうな曇り空。それでもコースコンディションは穏やかそのもの。締めくくりの集大成を見せる日としては絶好であったと思います。

僅か2ヶ月に満たないシングルキャリアで挑んだ淡路はB決勝となったものの、レースごとに成長を見せ、今季最後となったここではしっかりと1位入線を果たし、結果は総合7位。昨日は堂々の準決勝進出を果たし、今回のレースではしっかり一着で勝ち切るという、今季の成果としては申し分ないものでした。何より全日本新人戦の惨敗からよくぞ短期間でここまできたものだと感心もしています。

私自身も彼のレース前はもちろん不安もありましたが、当の本人も恐らく誰よりも危機感をもってここに備えてきたのでしょう。三本のレースを経験し、そのなかで一戦一戦成長する姿は来季に向けて多いに期待できるもので、これからが本当に楽しみな逸材です。

同じくシングルスカルで今回、スカル選手権に挑んだ我らが主将の鏑木は、先週のクリスマスレガッタで貫禄の優勝を果たし、当然ここでも同様の結果が期待されました。予選こそ仕事で見ることはできませんでしたが、順当に1位通過を果たし、挑んだ決勝戦。彼にとっては実に今季三度目の決勝戦で風格すら漂ってきたとすら思いながらレースに送り出しました。

その決勝レース。結果的には第3位と優勝まであと一歩のところまできて涙をのみましたが、最終戦でもきっちり入賞し、最低限の仕事を果たしてくれました。こちらも一年前の姿を思い返してみると今季は最上級生として、この一年で誰より成長し、逞しくもなりました。大学からボート競技を始めた選手の成長ピークは三年であることが多いと言います。これは恐らくこの先に待ち受ける就職活動や残り一年を待たずに引退する学生も多いことからだと思いますが、彼に関して言えばもう残り一年あることが楽しみでなりません。

今季、本大会同様に東日本級のレースではそれなりの成果を収めてきたわけですが、来季こそは2000mとなる全日本級の大会できっちりと結果を残してくれると信じています。そのための課題も明確で、いよいよ最終章へ向けてこれから1日1日を悔いなく過ごしてくれることでしょう。

そして、本大会で主役となったのは言うまでもなく二年生コンビの鈴木、吉澤です。今季最終レースの舞台となったのは念願のA決勝。鈴木にいたっては昨年に引き続き、二年連続となる決勝の舞台で、表彰状にあと一歩届かなかったリベンジがかかっていました。また吉澤も昨年は不慣れなシングルでの出漕を余儀なくそれ、今季も思うように結果を出せずに苦しんできました。全日本新人以降、一頓挫あった二人ですが、なんとか決勝まで漕ぎつけたわけですが、ここに至るまでの道も決して平坦なものではありませんでした。

予選通過はまず問題ないと見込んでいた緒戦。私は所用でレースを生で観ることができませんでしたが、TAから来るはずの結果連絡が来ないことで、嫌な胸騒ぎがしていました。コースに遅れて到着して結果を聞くところ三位であったと報告を受け、二人を目にした時にはさすがに表情を雲らせていました。

今回のダブルスカルは予想以上に出漕数が多いことから予選での1位抜けが絶対条件ではありました。東京都協会の仕組みからタイムで準決勝へ拾われるとはいえ、その数は僅か四席。既に予選三位であることから残りは三席。ましてや予選組み数が残り5組あると聞いて、正直この時点で半ば諦めの気持ちを持ちました。とにもかくにも他レースの結果を待つしかない、そんな思いで大会本部に向かい、静かに結果を待つ鈴木と合流し、共にその時を固唾を呑んで待ちました。

これは昨年の新人戦でも同様で、予選1位抜けできなかった宿命とも言える状況ですが、この時の心境は本当に複雑なものです。そして、レースの結果が一つ一つ発表されていき、最後の予選の結果を聞き終え、それと同時にTAの喜ぶ姿と鈴木の安堵の表情がすべてを物語ってもいました。そう、なんとか狭き門をくぐり抜け奇跡的にも準決勝へ進むことができたのです。

実はこの予選結果ですが、後になって聞いたところ全く実力を出しきれずに終えたものだと言います。ですから次に行われる準決勝では予選の敗戦を糧に、最低限の目標を決勝進出となる三位以内に定め迎えた準決勝。後半勝負と決めていたレースではあるものの、終始横一線の息を呑むレース展開はきっと本人たちも苦しかったでしょう。残り250m地点に差し掛かり、なんとかライバル艇をここで捕らえ3位に浮上するも、そこからは一進一退の攻防。ゴールした瞬間もは際どかったものの吉澤がガッツポーズを決めたのを見て、頭差ながらわずかに出ていたことを確信しました。

準決勝こそ一番厳しいレースになるのがボート界の常識てすが、その競り合うレースで3位と言えど、しっかりと勝ち切ることがてきたのも彼らの成長であり、今季最大の成果だったのではないでしょうか。とにもかくにもこれで最低限の目標としていた決勝進出を無事に果たすことごできたわけです。

そうして迎えた本日の決勝レース。この日もまた固唾をのんで結果を待つ時間が訪れます。実は決勝戦に関して言えば正直なところ昨年以上の結果は厳しいというのが私の当初の見立てでもありました。ボートのレースはタイムにより、大方レース前にはある程度の順位が予想されます。三位からの決勝進出。タイムにして五番手。これが現実でした。

ただ一つそこに希望があるとすれば全日本新人のレースができれば結果は自ずとついてくるというもの。何より、そのベストパフォーマンスを見せられるかは二人のメンタル次第で、どれだけ貪欲になり攻めることができるかにかかっていたのですが、それでも彼らはここから更に真価を発揮します。

迎えた決勝レース、昨日のレースとは一変して、スタートからアグレッシブな攻めを見せてくれ、決して他艇に置いて行かれることもなく500m通過時点で、またしても全艇が横一線。そんな中でも二人はなんとか三位を死守して必死に耐えていました。ですが、ここからはもう未知の領域でした。

この姿は決して後半に余力を残しているわけではなく、見ているこちらからすると、あとは彼らを信じるしかありません。残り250m、良し!逃げ切れると思った矢先、真横のクルーがここぞと言わんばかりのスパートを見せ、その勢いに目を疑いました。あとはもう踏ん張れと陸から声援を送り続けるわけですが、残り100mを切った時点で3位は絶望的だとこちらが先に諦めていました。それでも良くなった、良いレースであったなと回顧をはじめた瞬間、更に目を疑うことが起きます。

先頭をひた走る大本命のクルーが気付けば停止しており、そのまま転覆しようとしているのです。その間に当部を含めた3艇が続々とゴールを通過します。え?これはまさか?と半信半疑な状況に伴チャリをしていた淡路と何が起きた?と無言ながら見つめ合いました。そしてその状況に皆が、果たして1位クルーはゴールを通過していたのか、それだけが焦点となりました。

恐らく我々だけでなく、あの会場にいた大半の方が、圧倒的1位であるこのクルーの優勝はほぼ間違いなく、二位以下の混戦状態に見入っていたのではないでしょうか。それ故に、当該クルーが、ゴール線を通過してのアクシデントであったのかどうか、誰もその答えを持ち合わせていなかったのです。

ゴール線を通過していなければ3位、しかし通過していれば4位入線。とは言え、相手のことを考えると複雑な心境で、結果が出るのを待ち侘びるそんな時間を皆で過ごしました。恐らくこれはあまり前例がないゴール線手前でのアクシデントで、後に競漕規則を読んでみると漕手が落ちても、トップポールが通過していればゴールと認められると知り、通過していたかどうか、その結果だけをただひたすら待ちました。

そして、大会本部に待機していたTAから3位決定との報せを受け、部全体がその瞬間、歓喜に包まれたのです。これは本当に奇跡のような出来事で、運も実力のうちとはまさにこのことか、と自ら運を引き寄せた結果なのでしょう。そして何よりも1年前より、こうした好成績に喜んでくれる関係者が、この場に多くいたこと、これもやはり嬉しさが増すものでした。何より晴れて東日本新人で第3位を成し遂げた二人には本当に良くやったと褒めてやりたいと思っています。

ただこの二人に関して言えば来季のインカレを見据えるとエルゴ基準クリアという壁が、まだ立ちはだかりますが、今回の結果からも決して不可能なものではないと改めて感じます。そして、当部においては競技をはじめて2年足らずでこの新人戦で結果を出す、これが今後の一つの成功例となってくることを期待しようとも思っています。もちろんそれは来年の淡路にも当然期待するというものです。

この週末は保護者の方々、また若手OBなど多くの方が応援に駆けつけてくれました。土曜日のレース後に1番艇庫前に集まり集合写真を撮影したときには当部の関係者がこんなに大勢いることに喜びもひとしおでしたが、それが今の部の成果でもあるのだと実感しました。この日、現役を引退して以来初めて訪れてくれた初代主将の玉虫も懐かしさの光景を前に感慨深いと何度も口にしていましたが、まさにそうなんだと思います。(彼についてはまたこのブログで紹介しますが、今回は割愛します)

一年前のこの日、我々は来年に向けてスタートを切り、積み上げてきました。もちろん思い通りにいかず到達しなかった目標もあります。何度も言いますが、それでも部が大きな成長を遂げていることは言うまでもありません。ここまで関わっていただいた多くの関係者に改めて心より厚く御礼申し上げます。そして、何より今季ともに歩んでくれた選手、TAを労いたいと思います。みんな、感動をありがとう。

今後のことについては、このブログで報告させていただきます。

 

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