歴史を塗り替えるより塗り直す

清々しい朝晩の気候とともに、インカレが刻一刻と近づいているのを感じます。週末の戸田のボートコースではいつもの見慣れた光景ではなく、輸送されてきた艇の荷下ろしや、トランクケースを持って訪れる地方大学の選手たちと、この時期ならではの慌ただしさが随所に感じられました。コースにしてもどの時間帯でも艇で混み合い、大会前閉鎖とは名ばかりで、最後の調整を行うクルーが多く目立つそんな週末でした。

当部もインカレに向けた最終調整に入った鏑木、そしてオッ盾デビューを迎える淡路と、どこかしら緊張の面持ちを見せていますが、コンディションは良さそうだと確認できました。鏑木に至ってはちょうどインターンなどが重なり、艇に乗らない期間も少しありましたが、陸から見る限りでは特にこのインカレに向けて課題としていたダイレクトエントリーも理想に近づき、シートトップで一枚がほぼ上下運動がなく入水できています。レースレートがこれが実践できるか、またいかにコンスタントレートを維持できるかが勝負の鍵となることでしょう。初の2000mと言えど、臆することなく勇気を持って挑んでほしいと願うばかりです。

オックスフォード盾レガッタで他大学との合同クルーでデビューする淡路にしても、この週末がクルーで最後の乗艇となったようですが、なんとか間に合ったのが正直なところでしょう。それでもスイープ初心者で、ここまで漕げるようになったのはまずまずの上出来ですし、同じ未経験者同士から得られるものも大きかったでしょう。レースはきっとあっという間の出来事ですが、ここでレースを経験することできっと次にもつながります。心身ともにコンディションを整えていってほしいと思います。

一方、インカレ、オッ盾に出場しない2年生二人もこの先に秋の新人戦が待ち受けています。鈴木は肩を痛め、少しばかり戦線離脱しており、吉澤に至っても8月末に少し練習参加ができない期間がありました。目標が先のため、まだまだこれからではありますが、この大会期間が終わればいよいよエンジンをかけていかねばなりません。

いよいよこの水曜日は鏑木の運命のタイムトライアルですが、部としてもこの日をエルゴのタイムトライアル日に指定しました。淡路にとっては初の2000mで、どれほどのタイムを叩き出すのか、練習中のエルゴ記録から期待が高まります。また鈴木、吉澤にしても来季を見据える上では、今後に目途が立つ記録が、是が非でもほしいところです。二人については、1年前の記録から今後の大きな伸びしろを感じたものの、春からここまで伸び悩んでいます。ポテンシャルは秘めているものの、これにはやはり何かしらの理由があるのでしょうから、結果によっては今後の練習方法についても改めて相談していこうと思います。

さて、選手らの状況については以上の通りで、大会に向けての報告もあわせてしておきます。

ここ2年ほど新調したオールのブレードを塗らずに活動し、鏑木にはそのオールを使用させていました。一時は簡易的に緑のテープを貼って、緑十字として本来のブレードデザインから逆パターンを用いたりもしましたが、週末ようやくブレードカラーに塗装をしました。

なぜここまで引っ張ったかというと、第3フェーズの現在の活動ではブレードデザインの一部変更をずっと模索していました。結局、それを断念せざるを得なかったのは大会が間近に迫ったこともそうですが、協会とのやり取りの中で結論が出なかったことにあります。

そもそもブレードカラー、デザインというのは、ボート界で当たり前のように存在します。これは競漕規則にも記載があることから、どこもブレードカラー、デザインをチームで定めています。当部であれば緑地に白十字が伝統であり、他大学も独自のカラーやデザインを用いています。

でも私にはいつも疑問がありました。例えば、初めてボートコースに足を踏み入れて、レースを観戦した際にクルーが近づいてきます。該当のクルーのレーン№である程度、目的の艇を特定できると思います。ですが、対戦クルーのことはまったく分かりません。これはレース前アップで、多くの艇が陸を横切る際も、間近でユニフォームの記載を見るという手段を除いては、ほぼ特定できないと思います。

我々、経験者からすればどこのブレードは○○大学だと知識として伝えることができますが、それらを知らない人にとっては、カラーやデザインの違いがあってもまったく知る由もありません。このマイナー競技において一部の関係者のみしか知らない中で、当たり前のようにレースが行われること、そこにいつも疑問を持っていました。

もちろん最近では実況や途中経過のアナウンス、また、現代ではスマホが普及し、ネットでリアルに組み合わせや結果も更新されるので、その情報も参考になるでしょう。とは言え、伝統と誇りだと各大学やそこに属するOBらが豪語するブレードは、むしろ狭い世界での共通認識なだけであることに違和感を覚えます。だからこそ、こうした閉塞感がある当たり前を打破していかねばという強い思いに駆られてもいました。

そこで発案したのが、裏面に元来の本学のブレードデザインを残し、表面に大学名とロゴのデザインを入れるというものです。ブレード自体の変更は歴史を見れば、賛否両論があるとも聞きます。過去の思い出や伝統を重んじるのも必要ですが、新しい未来を切り開いていくために一新することも時には必要ではないでしょうか。とは言え、これを私一人の一存で断行するわけにはいきません。だからこその折衷案でもあったのですが、これは実際には不発に終わりました。正式に日本ボート協会からの回答をもらい、グレーである規則に縛られるかたちになりましたが、今後検討の余地はあるということで中長期的に見て、考えていこうとも思います。

またその上で、今できることとして行ったのが、本学のカラーについて現在のシンボルカラーに近いイメージを用いたことです。元来、深い緑、濃い緑が基調にあったかと思いますが、現在、大学サイトで用いられているシンボルカラーは青緑や翠色に近いものです。よって、より近い色で、且つ、マットに仕上げたのを今回の記事画像でも確認いただけると思います。

以前までのカラーですとコースの水の色と近く、また曇った日にはR大との見分けが付きにくいという難点もありましたので、今回のインカレではこのNEWカラーで挑みます。2年ぶりのインカレで、且つ、近年の成績からもブレードデザインで本学を特定できる人は恐らく半数にも満たないでしょう。それでも鏑木選手が「青学ここにあり」と証明してくれることにも期待しています。

ちなみに日曜は天気も良く、風も吹かず、いわゆる塗装日和でしたので、朝からコツコツ作業を実施しました。よくよく見ると現在使用しているブレードの塗装もだいぶ剥がれ落ちており、カラーも一新したことから年内には一度、塗り直しの機会を持ちたいと思います。

この日、改めてマジマジとコースで各大学のブレードを目にしたときにあることに気付いたからです。強豪校と言われる大学は、ブレードの塗装も剥がれ落ちることなく、しっかりとしたデザイン、カラーを維持しているのです。

要はこうした大学としての誇りをしっかりと刻み付け、小さな努力を怠らず、管理している大学は実力以外の面でも優れているということなのでしょう。こうした小さな積み重ねこそ選手の努力以外に我々スタッフのできることの一つなのだと思います。ついつい歴史を塗り替えようとすることに目が行きがちですが、本来の伝統や文化を守っていくためにできることも無数にあるということです。まずはこうした小さな当たり前から見直していこうと思います。

今週は大会レポートやエルゴ結果など、随時更新していくつもりですので、乞うご期待ください。

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