ここしばらく冷たい雨が続いていましたが、文化の日を含む三連休は一転して晴天に恵まれ、澄み渡る空と空気が秋の深まりと、冬の訪れを感じさせるような気候でした。
そんな三連休の土日に開催された『第66回全日本新人ローイング選手権』にて、当部の白川海生選手が見事優勝を果たしました。
ただし、表彰台に「青山学院大学」の名前はありません。今回は中央大学との混成エイトとしての出場だったためです。
それでも、これはボート部にとって紛れもない快挙。全日本級大会で初の金メダル獲得という歴史的な成果です。
(※部昇格前にペア種目での優勝記録はあるようですが、現体制では初となります)
今回のブログでは、この快挙に至るまでの背景と物語を綴っていきます。
白川への混成エイトのオファーは、本人にもスタッフにも予想外の出来事でした。
2年前、当時2年生だった前主将・淡路が中央大学から声をかけられ、単身で混成エイトに参加。結果として銅メダルを獲得しました。
その時は中央大学がエイトで出漕するのに1名不足しており、淡路がそのピースとして適任だったのです。
以降、中央大学とは良好な関係が続いており、現在は結城コーチの息子さんも中央大学ボート部に在籍しているので、当時と比べても関係はより深まっていると勝手に思っております。
今年はエイト編成に2名不足との噂もあり、白川も淡路の前例を思い出しつつ、淡い期待を抱いていましたが、さすがに難しいだろうと半ば諦めていたようです。
しかし、インカレ期間中に結城さんから「もしかすると…」という話があり、最終日に正式なオファーが届きました。
その知らせを受けた白川は、驚きよりも純粋な喜びを見せていたのが印象的でした。
さらに、もう1大学からも選手が加わり、正式に混成エイトが結成されました。
今回の大会で2年前と異なっていたのは、参加した人数だけではなく、「混成」と明記されたクルー名での出場となったことです。
以前は混成であっても代表大学名のみが記載されていたため、混成であることは選手名からしか読み取れませんでした。
それが今年から混成表記が可能となり、たとえ「青山学院大学」の名前がなくとも、他大学の選手が加わっていることが明確に示されるようになりました。
またSNSやWEBが発達した今、ここに青山学院大学の白川が乗っていることは戸田界隈ではすぐに知れ渡ったことでしょう。
この〝混成〟表記はインカレと併催するオックスフォード盾レガッタなどで最近用いられるようになったクルー表記ですが、今年の新人戦では、エイト種目を除き、多くの大学が、それぞれの大学名をあわせた〝混成〟として出場していました。
ですが、このエイトに限って言えば、3大学の混成ともなるとクルー名の印象が薄くなりがちで、おさまりの悪さなどを考慮すれば、今回のクルー名は母体となる『中央大学混成』というかたちが、一番しっくりきたと個人的にも思っています。
何より、「中央大学が混成エイトで出場してきた!」それだけでも十分インパクトはあったでしょうし、結果として、その成果を見せつけることにも一役を買うことになったわけですから。
レースについては、私は日曜の2レースをゴール付近で観戦しただけなので詳細は控えますが、日を追うごとに完成度が高まり、優勝に至ったことが最大の勝因だと感じています。
ただし、これも当然と言えば当然ですが、クルーを組んだ当初は、まったくと言っていいほど噛み合わず、当の選手たちも勝てる手応えはなかったようです。
それはそうですよね。普段はまったく異なる環境に身を置く選手を二人乗せて、一から作り上げていくわけですから、並大抵のことではありません。
そういう意味では、純粋に単独で出場してくる他大学のエイトに比べれば、この唯一の混成クルーは大きなハンデを背負っていたと言っても過言ではないでしょう。
それでも、クルーとしての歯車が一度噛み合い始めると、艇のスピードも、気持ちも、尻上がりに上昇していきました。
結果、他の純粋な大学クルーを差し置いての優勝。これにはまさに彼らが主役だったことを物語っています。
「混成だから強い選手を集めて勝てたのでは?」という声もあるかもしれませんが、少なくとも当部に関してはそれは当てはまりません。
白川は確かに競技歴1年半とは思えないほどの実力を持つ選手ですが、インカレではペア種目で上位との差を痛感したばかり。
ましてや名もなき大学、名もなき選手との混成に対して、当然、エイトを組むことを疑問視する声があったとしても不思議ではありません。
それでも、そんな未完成の白川を率いて優勝に導いたクルーメンバーのチーム力、また人間力こそが、今回の勝因だと思います。
何度も言いますが、今回は混成クルーで優勝を成し遂げたことにこそ、最大の価値があるのです。
だからこそ、レースでの感動とともに、「混成を受け入れくれてありがとう」という気持ちで胸がいっぱいです。
そして、この優勝を誰よりも複雑な思いで見守っていたのが、我らが結城コーチです。
親として息子を、コーチとして白川を乗せたクルーが優勝をかけて挑む。ゴール後、結城さんが涙を浮かべていた姿に、私自身も胸が熱くなりました。
大学時代から知る結城さんは、勝ちへの執念が強く、負けを悔しがる姿はまるで少年のよう。喜怒哀楽を素直に表現するその人柄に、いつも多くの人が惹きつけられていますいます。
これだけ多くの立場でこのクルーを見守る人は他にいないでしょうから、優勝の瞬間に立ち会えたことは、何よりの報いだったと思います。
だからこそ、私はレース後、嬉しさより、安堵の思いで星羽くんと白川に「ありがとう」と心の中で叫びました。
そして、私がここでつらつらと述べるより、当事者として結城さんの思いを文章にしてもらうのが良いと思い、2回目のブログ更新を依頼しています笑
きっとまた日常に忙殺されて、時間はかかることでしょうから、今回はある程度のことはこちらで速報的に書かせていただきますが、是非その思いを皆さんにも直接伝えてほしいと思っています。
さて、そんなわけで、2年越しの夢でもあった中央大学さんとの混成エイトでの優勝。
選手たちは見事に成し遂げ、表彰式での関係者たちの嬉しそうな姿を見て、うちの部員たちも、そして私自身も大いに刺激を受けました。
2年前、淡路が混成で銅メダルを獲得したあの日から、「いつかこの舞台で優勝を」と誓ってきました。
その思いが白川に継承され、奇しくも当時の優勝校を破っての優勝。これは私たちにとっても大きな物語です。
特にこの1年間。白川は淡路と共にクルーを組む中で成長してきました。入部以降、淡路に追いつけ、追い越せという気持ちで日々の練習にも励んできました。
今年はスイープ種目に挑戦し、インカレでは悔しい結果でしたが、その経験が今回のエイトで活きたのだと思います。
中央大学に飛び込み、臆することなく声を出し、存在感を示す姿勢。貪欲で前向きな彼の姿勢が、クルーに受け入れられたことも大きな要因です。
2年前の表彰式で見た空と水面が、私にはとても印象的でした。
今回の表彰式でも、賑わう人々から少し離れたところで、その空と水面を見渡し、その静寂の中で、「ここまで来たんだな」と実感し、青山学院大学としての成長も感じました。
部員数も増え、存在感も少しずつ高まっています。まだ単独で全日本級に挑むには力不足ですが、続けてきたことが成果として現れる瞬間は、何よりの喜びです。
澄み渡る空と、それを映す水面。この秋からまた一歩ずつ。
私にとって、始まりはいつも秋です。
これから長い冬が待ち受けていますが、きっとここからまた一つひとつ成長した姿を見せてくれることでしょう。
選手たちも。ボート部も。それに負けないよう、私自身も成長していかなければと誓ったのでした。

  
  
  
  
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