人を通して何かを生み出せるか

あいにくの天気ですが、正式には今日から全日本大学選手権がいよいよスタートします。昨日の結果は残念なものの今は仕事の関係で平日に休みにくいこともあり、週末までは結果のみ追っておくことにいたします。

さて、昨日からの続きとなりますが、もう少しだけ振り返りにお付き合いください。鏑木のレース終了後、9時スタートで他部員らのエルゴ測定を実施しました。最近はある程度の間隔を決めて事前予告の上、測定日を設けていますが、大体はこうした合宿練習の成果を試すという意味合いが強いです。

ちょうど試験が終わり、休み明けにも現状確認として実施をしましたが、ここでは当然思うように好タイムは出ませんでした。これはある意味、計算通りでもあり、この夏の練習量からすれば自ずと成果は出るだろう、そんな予想をしつつも、最近ではトライアルに身構えてしまう傾向にあるのも若干の不安材料でした。

今回、実施したのは2年の吉澤と1年の淡路の2名です。(鈴木は肩の故障で今回は見送っています)淡路に至っては合宿中のエルゴスコアを見てもかなりのポテンシャルを秘めており、初測定である程度の記録を出した方が、先々楽になるのではという思惑もあり、ここまで引っ張りました。

恐らく、ボート競技をはじめて誰しもがこの2000m測定を実施する際、思い切りが良く、言うならば怖いもの知らずでスタートから飛び込んでいきます。それには毎度驚かされるものですが、実際にはそう甘くはないのがこの2000m測定です。大方は見立て通り、500mを過ぎたあたりでどんどんと落ちていくのですが、不思議なことにこの初回の思い切りの良さというのは2回目の測定以降には大概なくなるのです。それくらいやはり2000m測定に恐怖心を持ってしまうからなのでしょう。

ですから本来は、ある程度、自分で今なら更新できるという自信があった際に行うのが恐らくベストなのだろうと思いながらも、やはりレースは決して待ってくれません。どんな状態であっても、決められた日にベストコンディションを整え、ベストに近いパフォーマンスを発揮する、これはアスリートとしてとても必要なことなわけですから。

2年生二人については実はこの節があるのかな、というのが最近の伸び悩みから感じ取れていました。特に吉澤については自身が一番頭を悩ませ、結果が出ない歯がゆさをずっと感じていたことでしょう。結果、この日、彼は10秒以上を短縮するスコアを記録するのですが、やはり測定前にはナーバスになっており、後から聞いたところによると3日ほど前から考え込んでしまっていたようです。

それでもこの夏、彼にはセット数を考えることなく、1セット目が勝負、あとはどうなってもいいからそこだけは誰にも負けないように取り組むよう個人的にアドバイスしていました。それに応えてくれるだけの日々の記録を見ていて、恐怖心が少しでも和らいでくれればと願っていました。

結果、この日は前半から攻め、肝心の中盤を本当に耐え忍んでいる様子がうかがえました。恐らく毎度の測定同様に中盤に距離を見て、まだこんなにあるのか?といった絶望が襲ってきたことでしょう。(これはボート経験者であれば誰もが記憶にあると思います)それでもこの日の彼はここからが違いました。これまでのうっ憤を晴らすべく、気持ちで勝負していたのが本当に見て感じ取れました。部員らからのゲキを力に変えて、漕ぎ終えた後には喜びを心の底から表現しており、見ているこちらも本当に嬉しく思ったものです。

こうした個の成長は、ずっと見てきているからこそ肌で感じるもので、我が事のように嬉しく思うのと同時に、こうして一歩ずつ強く、逞しくなっていくことで、ふと安心もするわけです。恐らく社会に出てからもこの2000m測定より辛いことはそうありません笑。だからこそこうした自らの成長で自信を付け、競技を通じて羽ばたいていってほしいというのも指導者としての願いの一つなのです。

そしてもう一人の挑戦者である淡路については、初回での7分切りなるか、と試みたわけですが、前半の入りは良かったものの(これが思い切りの良さ)、中盤から地獄を見ることなりました。当初ダイナミックに力強く漕げていたパフォーマンスも距離が進むにつれ、持ち味が失われていったのは測定の魔物にしてやられたということなのでしょう。

それでもやはり持っているポテンシャルは相当高く、未完成な漕ぎを気持ちで補う姿勢が随所に見て取れ、終わってみれば7分一桁のスコアをたたき出してくれたのです。このスコアとは裏腹で、本人の中では想像以上のきつさと、ペース配分を失敗したと後悔が残ったことでしょうが、これは漕ぎそのものを改善できれば更なる記録の更新も可能でしょう。ある意味、課題は明確で、その点を修正するだけで近いうちに大記録が生まれる、そんな予感すら感じさせたくれたのです。

こうして、チャレンジトライアルでの敗戦ショックはありながらも当部としては明るい話題もあったのが昨日という長い一日でした。すべての終了後にはTAも含めた全部員でミーティングを行いました。それぞれの今日に至るまでの感想を述べ、時には涙を流し、その姿を見て互に感極まったのは言うまでもありません。私自身もそうでしたから。

それでも1年前と比べれば部員の数も、また個々にも大きな成長を見せ、今ここにいます。そして皆が口をそろえて、今を楽しみ、ここにいることの意味を感じ取っている、それが伝わってくることが何より指導者として嬉しくありました。そして、自分たちはまだまだこれからであると同時に大きな可能性を秘めているのだと確信しました。

監督業を通じて学ばせてもらうことは本当に多くあります。過去の部員、つまり現役部員の先輩らも本当に多くのことを私に教えてくれ、それが今の指導の根幹になっていると思います。日本の部活動はどこか自主性が少ないと見られる傾向があり、旧来の体質なのか未だに多く残っています。でも本来の大学の部活動はそうではありません。少なくとも我々が目指すべきところはそうではないからです。

それぞれがこうした体験を経て、成長し、刺激し合い、絆を深めていきます。そして自身が何をすべきかが分かれば行動が変わってきます。はじめのうちは対個人、つまり自分だけのことを考えがちですが、後に支え合い、共に学び、チーム主体で物事を考えるようにもなってきてくれることでしょう。ですからミーティングでは特に個々の感情や思いをアウトプットさせることを意識し、それぞれの思いや考えを知ることで、より高め合っていけるのではないでしょうか。そもそも主役は彼ら彼女らで私は誘導役に過ぎません。

最近は組織作りにやや疑問を感じ、存在価値やその意味に疑問を持ちながら仕事をすることが多くありました。組織は本当に人によって変わるものだと常々感じながら、人が替わることでの不安や向かうべき方向性にも疑問すら感じます。知らぬ間に壊されていく大切な場所もその一つで、苦しむ者の声を聞き、何もできない自分に苛立ちすら感じました。自らがプレイヤーになることは簡単です。でも組織つくり、マネジメントというのは「人を通して何かを生み出す」ことにこそ意味があるのです。ドラッカーの考えそのものですね。

組織を強くしていくことに何が重要で、何が必要か、私自身は彼ら、彼女らと接することでもう一度再認識することができています。野望はいくつもありますが、今為すべきことをまずは一歩ずつ。そんな思いでまた今日も朝を迎えています。

最後に、この夏の期間、選手らの支援ということで若手OBからも差し入れ等をいただきましたが、今週火曜には杉山さんにも戸田へお越しいただきました。あいにく私は仕事で不在であったためお会いすることはできませんでしたが、TAを通じて寄付をいただいたことも報告がありました。こうして気にかけてくださる諸先輩方の存在にも改めて御礼申し上げます。

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