これは一種のスランプである

本日は3大学対抗戦が行われました。

いつからかこの大会に声をかけてもらえるようになり、毎年参加をさせていただいています。こうした縁でつながっていることに感謝しかありませんが、この時期に2000mを漕げるということも本当に選手らにとっても貴重な経験になります。

今日は朝方強い雨が降ったようですが、レース前にはすっかり上がり、若干追い風が吹くコースは時折水面鏡のような絶好のコンディションでした。今大会にはシングルスカルで鈴木、吉澤が、また対抗ダブルスカルという組みで鏑木、淡路がそれぞれ出漕しました。

シングルスカルは当初もう1名のエントリーがあったようですが、スタート前、デッキに付けていたのは当部の二人だけで、結局うちわの戦いをこの大会でさせてもらったことになります。

鈴木は自身にとっても初の2000mレース、吉澤は昨年このレースにダブルスカルで出漕していますが、シングルスカルでは初の2000mでした。結果は鈴木に軍配があがりましたが、吉澤は残り250mを切った付近でブイに当たってしまうアクシデントなんかもありながらなんとか完漕することができました。

それぞれ初めての経験で漕いでみての感想はあるでしょうが、こうして互いに艇を並べられたことにも意義があったのだと思います。どちらもレートは若干低めでしたし、艇の進みという点でも課題もはっきりと見えました。このまま今週はシングルスカルでともに戸田レガッタに出場しますので、ここでもスカルならではのレース感や経験を積んでおけばきっと次に繋がってくることでしょう。

一方、全日本を目指すダブルスカルの二人はどんなレースをしてくれるのか、こちらも静かに見守りました。スタートからの飛び出しは思った以上のハイレートで、序盤、中盤も想定以上のレートを維持するものの抜け出した2艇に中々追いつくことなく終盤を迎えました。

相手よりレートが高いにもかかわらず差を詰めることができず、残り500mを切った早めの地点からスパートを入れ、一時は2位に浮上すると見えたものの、結果終わってみれば3位でのフィニッシュとなりました。

一見、外からみれば以前より動きもシンクロするようになり、入水タイミングもずいぶんと合うようになってきていましたので決して悪い印象はもちませんでした。それでもやはりこれだけ他艇と差がついてしまうので、ドライブの質そのものに原因があるのだということは本人たちからのコメントからも感じました。

持っているポテンシャルやフィジカルの強さは決して劣っていない、それでもレースでそれを生かし切れていない、というより水上で発揮できていない、それがこの結果だったんだと思います。もちろん悲観をする必要もないのですが、課題はまだまだ多いなということはシングルスカルの二人も含めて大いに感じた今日のレースでした。

レースであってもあくまで練習の一環と位置付けていたので、午後の練習は通常通り行いました。ただ、この日もコース閉鎖が続いていたので、先週に引き続きエルゴでの20分漕を実施。さすがに午前中の疲れがあってか皆、体のキレもなく、先週と比較してもかなり辛そうな印象はありました。

というより、全員がやってきたことが成果として表れていない一種のスランプのような状態に陥っているということを肌で感じたのでエルゴメニューの後に全員とディスカッションの機会を設けました。

一つの課題はやはり下半身主体で力を伝え切れていないことです。今日は特にここに着目し、全員のエルゴ最中のストレッチャーの動きを撮影し、それぞれにどういうイメージをもっているかを擦り合わせました。そうすると思った以上に着眼点が違うことに驚きましたが、まずは今こちらが求めることを伝えました。

そのポイントはそれぞれの足の動きが示す通り、ほとんどの選手はストレッチャーに負荷がかかり続けられず、完全に力が逃げてしまっている漕ぎ方ということです。おそらく当人たちは無意識ながらまさにハンドルを引いて漕いでいる気になっているだけで、脚で押し切れていない、それが顕著に表れてもいました。

ですから、参考例となる鏑木の脚の使い方を意識させ、下半身を使って長く漕ぐ(長くプレスを続ける)ことの意味を伝え、意識的に実践をさせました。他にもそれ故にレッグオンリーで水中強度を上げることができていないことを体現させ、下半身をどう使うかについて滔々と伝えました。

おそらく頭ではある程度理解してくれたのだと思います。ただしこれまでの漕ぎ方を一度忘れて、それを意識的に行っていくには少し時間がかかるのも事実です。それでも今のままではエルゴのパフォーマンスやフィジカル強化は図れても、艇速は伸び悩み、いずれ限界がくることでしょう。

だからこそ、このタイミングで意識改革をそれぞれが実践できなければさらなる成長は難しく、でも逆に言えばこれが出来さえすれば艇は劇的に進むのだとも思っています。細かなテクニックに磨きをかけることはこれから先できたとしてもやはりエンジンがきちんと走る、進めるという動力に伝わらなければどんなに改良したところで艇は進まないわけなのですから。

こうしたことを伝えるのが少しタイミング的に遅かったのかもしれませんが、基礎的なエルゴの強度があがってきている今だからこそ、きっと実践もできるのだと思ってもいます。力なくして教えたところで数字が伸びないので、それが続かず、伸び悩んでしまう恐れもあります。

何を教え、何から伝えるが先か、というのはボート競技で特に考えさせられるところです。うまくいかないエントリー一つを見てもエントリーをできない要因がそもそも多くあったりもします。それ故に実にシンプルで単調な競技ながら難しさと奥深さもあるのも特徴の一つなのでしょう。

でも大事なことはやはりエンジンなんだと思います。今の部員らはそれなりにエンジン性能を高めてきてもいますので、ここから本当に力をうまく艇に伝え、進んでくればきっとバランスもリズムも改善されます。これらが好循環になればテクニックも磨けます。

すべてはサイクルです。どれが先か、という答えは未だ見つからないものの、どこかのタイミングできちんと教えていかなければいけないのでしょうね。4年間という限られた時間で勝負ができるだけの育成をするというのは本当に難しいものです。

ましてや経験者との差をこの短期間で埋めなければいけないので、そこは本当に過酷なことです。それでも意識して続けていればきっと改善も早く、正しいことに気づいて自発的に取り組んでいってくれれば進化もきっと早いことでしょうから。

今は全員が過渡期にあるのだと思います。でも変わるなら今しかありません。今日の教えを1、2ヶ月実践できたならばその成果は間違いなくでてくることでしょう。夏前にそれぞれが何かを発見し、進化していれば今季を戦っていくための武器になるでしょうから、引き続き私もできる限りのサポートをこの期間でしていくつもりです。

私自身も先月から始めたランニングでは少しずつタイムを縮め成果がでてきました。どんな世界でも成果がでないほどつまらないことはありません。やれやれと言われても基本的には変わりません。どこか自分の限界を決めて、やった気にになるのが通常です。

でも自分で変わらなければと思うタイミングであれば新しいこと、難しいことも聞き入れやすくなります。それを継続して実践していくには自分なりの理由や動機が必要なんだと思います。変わらなきゃ、そう感じてくれるレース結果であったのであれば、今日という日が決して無駄な敗戦だったとは思いません。

敗れたことを次に生かすということがスポーツの良さなんだと思います。スランプというのは理由なく訪れることかもしれませんが、成長し続ける過程の中でも伸び悩むスランプはあるでしょうからそれを好機と捉えて、変わることが重要なのです。

私自身も皆に感化され、まだまだチャレンジできていないこと、普段の自分に甘えていることを改めて気付かされました。今年は多くの挑戦を続けるつもりでいましたが、少しブレーキをかけていたところもあったので、自らもエンジンを再度かけていくつもりです。

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