こんな幸せなことあります?

晴天に恵まれた中で開催された、先日の戸田スプリント。

私が率いた青学オールスターズのエイトは、おかげさまで見事に優勝を果たすことができました。この年齢になって再びレースに出場し、勝利の味を噛みしめる日が来るとは、正直思ってもいませんでした。

監督ブログなのに……現役部員の話題を差し置いて、こんな報告から始めてしまうことに、申し訳なさでいっぱいです(汗)

それでも、勝利(1着すること)の意味、ボート競技の素晴らしさ、そして何より、このボート部を愛する仲間たちとの絆を改めて実感することができました。

そんな私ですが、昨日は例によって寝込んでしまい、仕事もお休みすることになりました。

試合翌日の月曜日は会議なども予定されていたため、さすがに休むわけにもいかず、なんとか耐え抜いたのが本音です。昨日はというと、家から一歩も出ず、完全に病床に伏していました。

それもあって、今日はなんとか元気に(?)出勤しております。

よくよく考えてみれば、この年齢であれほど限界までパフォーマンスを発揮すれば、そりゃ無理もないよな……と自分に呆れつつも、それほど熱くなれるものがあったことに感謝しながら、今日はそのことを中心にご報告させていただきます。

エイト結成から当日を迎えるまで、グループLINEで連絡を取り合っていたものの、意外と反応が少なく、本当に集まれるのかという不安を抱えたまま当日を迎えました。

集合時間になっても誰も現れず、「これもこのメンバーらしいな」と思いつつ、続々と駆けつけてくる懐かしい顔ぶれとの再会に、素直に嬉しさが込み上げました。

レース時間やリギング準備を優先した結果、部員たちの出艇は元さんに任せきりとなり、レースの合間に観戦するだけになってしまいました。

徳谷・髙橋のダブルスカルは、練習では見られなかった安定したパドルに「おっ」と驚かされましたが、後半にアクシデントが発生し、不本意な予選敗退となりました。

それでも、スカル種目に乗り替え、1年生クルーとして試行錯誤を重ねてここまで仕上げてきたのは立派です。結果は悔しいものとなりましたが、ポテンシャルの高い二人なので、この冬さらに腕を磨けば、来季には一段と成長した姿を見せてくれることでしょう。

また、仲村・飯尾のダブルスカルは上級生らしく、日々の練習でもメニューをしっかりこなせるだけの練習量を積んで臨むことができました。

予選も順当に勝ち上がり、Bファイナル進出で総合8位。スプリントレースとはいえ、レースパドルでの安定した漕ぎで、今持てる力をすべて発揮してくれました。こちらもさらに力をつけていけば、まだまだ成長していくことでしょう。

そして女子シングルスカルで出漕した菜名ちゃんは、今回もAファイナル進出を果たし、見事3位入賞で銅メダルを獲得しました。

予選・決勝ともに不得意なスタートで出遅れながらも、持ち味である安定したストロークで後半にぐいぐいと追い上げる漕ぎは、この短期間でのさらなる成長を感じさせるものでした。

ハイレートが十分に出せていない中でのこの結果は本当に立派で、着実に結果を出していく彼女への期待は膨らむばかりです。

来年はそれぞれがさらに大きな舞台で輝けるよう、共に頑張っていこうと思います。

さて、話が前後しましたが、我らがオールスターズも、エイト種目が初めての私をはじめ、スイープに不慣れなこともあり、レース時間より余裕をもって出艇しました。

当日まで確保できなかったコックスのシートには、こちらもエイトで初コックスとなる元さんを乗せ、皆が緊張の中での船出となりました。

エイトに初めて乗った私の率直な感想は、乗り慣れた小艇と比べて随分と幅広で、安定感があるというものでした。

そして実際に漕ぎ始めてみると、後ろからぐんと押されるような水中の感触と、これまでに感じたことのないスピード感と重厚感に、ただただ驚くばかりでした。

「これがエイトか」と堪能しつつも、レースに向けたパドルやスタ練をしなければという不安も募るばかりでした。ただ、後ろのメンバーがどう感じていたかはわかりませんが、元さんの掛け声に合わせていつも通りの漕ぎをしていると、自然と皆の息が合い、一体感が生まれていくのを感じました。

「もしかして、普通に漕げちゃうかも?」と思いながら予選のスタートに立ちました。自身の不安は、そもそも本当に500mの距離を漕ぎ切れるのかということ。ストロークとしての責任も感じていました。

しかし、スタートを切ってみると予想以上のストロークレートで漕ぎ始め、いざコンスタントに落とそうとしても、後ろからの圧でまったく落とせる気配がなく、結果として、戦前に元さんが豪語していた「コンスタント五本でスパート」という展開そのままとなりました。

艇が若干曲がった以外は大きな問題もなく、相手を見ながらのレース展開となり、なんとか最後まで漕ぎ切ることができました。

1着でゴールした瞬間は、「こんな出来過ぎなことがあっていいのか」と、喜びよりも一瞬冷静になってしまいましたが、次の決勝でもう一度レースができることを素直に嬉しく思いました。

そして迎えた午後の決勝レース。エイトということもあり、この日のオオトリを飾るレースとなったため、あたりは夕暮れのような景色となり、少し肌寒さも感じ始めていました。

この日2本目のレースということもあり、さすがに皆疲労を感じていたのか、予選のときほど元気のないアップに不安を覚えつつも、漕ぎとしては随分とまとまってきていました。

それは1レースを終えて不安が自信に変わったこと、そして元さんのコックスとしての掛け声が絶妙で、気分を乗せて気持ちよく漕がせてくれたからです。

コックスを要するクルーにあまり乗ってこなかった私には、コックスの重要性をあまり感じたことがありませんでした。しかし、エイト種目のように後ろの状況がまったくわからない艇種においては、コックスがいかに重要で、漕手の気分を乗せるかなど、その資質が問われるのだと、この歳になって新たに学ぶこととなりました。

そして迎えた決勝レース。予選のタイム的には優勝も射程圏内であると、口には出さずとも誰もが意識していたことでしょう。

唯一の不安は、結城さんが送り込んだ刺客(英和と愉快な仲間たち)と噂されるクルーのメンバーが、予選時とは明らかに変わっていた点でした。

いざスタートを切った瞬間、その不安は的中しました。前半は「なんなく出られるだろう」と思っていたにもかかわらず、まさかのリードを許す展開に、若干の焦りを覚えました。

それでも、距離への不安はすでに払拭されていたため、残り250m地点で元さんが発したスパートの合図に呼応するように、エンジンを再点火。そこから一気に加速しました。

残り100m付近では、わずかにこちらがリードを奪い返していましたが、その勢いを止めることなく、最後まで全力で漕ぎ続けました。そして栄光のゴールラインを通過した瞬間、何の打ち合わせもなかったにもかかわらず、皆が同じような喜びの声をあげたのです。

その歓喜を噛みしめる間もなく、疲労が一気に押し寄せ、さすがに息が上がりすぎて、持病の喘息が発症しないかと不安を感じましたが、幸いにもその心配は杞憂に終わりました。

実はもう5年ほど前になりますが、鏑木とレースに出場した際、レース後に喘息発作で命の危機を感じたことがありました(笑)

それ以来、激しい運動による発作を恐れて、心拍数が上がるようなことは避けてきたのですが、後に動画で振り返ったレースレートは、スタートレート40オーバー、そして終始38,39で漕ぎ続けていたのです。

これには私自身も驚きましたが、きっと後ろで漕いでいたメンバーも、今の平穏な生活ではなかなか体験できない、刺激的な時間だったことでしょう。

また、その動画で振り返ったゴール後の皆の喜びの反応を、何度も何度も見返しました。

大会の規模やレースの状況は違えど、ここにいたすべてのメンバーが、勝負レースというものを幾度となく経験してきた者たちです。

戦績や結果の経験値はそれぞれ違えど、この日はこのレースに懸ける思いが一致していて、たとえ小さな大会であっても、優勝のゴールを真っ先に切るということは、やはり素晴らしいことでした。

それを象徴するかのような、皆の喜びの瞬間。これを見返すたびに、嬉しさが何倍にもなって胸に込み上げてきました。

未熟な指導者であるがゆえに、目指すべき景色や到達すべき場所にまで連れていってやれず、悔しい思いをさせてきたメンバーたち。

それでもボート部を愛し、卒業後・引退後にこうして一緒に漕ぎ、勝利の瞬間を共に味わうことができたことは、何にも代えがたい喜びでした。

陸に上がってからは、皆に握手を求めました。引退した後に、まさかこうして「お疲れさま」と言い合える日が来るなんて、想像もしていませんでした。

それでも、この日集まってくれた皆が、それぞれの立場でこの勝利を噛みしめてくれていることでしょう。

私にとっての「初エイト」という一つの夢もありましたが、こうして素晴らしい瞬間を味わえるなんて、本当に「こんな幸せなことってある?」と思える一日でした。

もちろん、これからの監督としての人生においては、現役部員たちや、まだ見ぬ未来の部員たちが、これ以上の感動と歓喜の瞬間を体験させてくれるだろうと期待もしています。

いくつになっても、こんな経験ができるボート競技の素晴らしさを、改めて感じた一日でもありました。

そしてこの日は、青学ボート部を応援するために、現役部員やOBの保護者の皆さまが駆けつけてくださり、さらにはエイトメンバーで最古参の桜田の先輩にあたる日原、小林、西崎までもが、お子さんを連れて応援に来てくれました。

私が監督として駆け出しだった頃、この部の門をくぐり、苦楽を共にしてきたメンバーです。

今よりさらに未熟だった私のもとで、当時も部を良くしようと熱い思いを持って活動してくれた創世記の仲間たちです。

あの頃は本当にいろいろなことがありました。でも、あの時から変わらないのは、彼ら・彼女らの熱意。

皆が歳を重ねるのと同じように、私も確実に歳を重ねています。

それでも、こうしていつの時代にもボート部を愛してやまない教え子たちが訪ねてきてくれることほど、嬉しいことはありません。

何度でも言います。こんな幸せなことってありますか?

もちろん、この物語はこれからも続いていきます。そしていつの日か、皆で「あの時はさぁ」と口々に昔を懐かしみながら、また振り返ることができたらいいなと思っています。

まだまだ夢の途中です。それでも、皆に支えられながら、今を生きています。

この日集まってくれたすべての方に。そして、私たちを応援し、支えてくださるすべての方に、感謝の気持ちを込めて、また歩んでいこうと思います。

親愛なる皆さまへ。より良き日々と、より良き人生のために——これからも青山学院大学ボート部は、あり続けます。

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