スポーツの楽しさとその原点

さて、先日お知らせした通り、今季の最終戦となる第19回クリスマスチャレンジカップが昨日、戸田ボートコースで開催されました。

結果はホームページでもご覧いただける通りですが、初のシングルスカルで挑んだ鏑木は予選を見事に1着で通過し、全体で4番目のタイムで決勝Aに進んだものの最後は力及ばず総合5位という結果で終えることとなりました。

とは言え、以前にも述べたようにどの艇よりも真っ先に一着でゴールするということを早速実現してみせ、なにより自身にとっても一人の力で挑むシングルスカルで、その成果を出せたことは本人にとっても大きな収穫となったに違いありません。

ただ、5位という結果の敗因も明らかで、本人のコメントからもその反省と今後に向けての課題を改めて実感する機会ともなったようです。

鏑木に関して言えば、昨年、夏の終わり頃から私と乗艇をはじめ、週末中心に練習を行っていました。

秋には既に先輩たちが引退していたこともあって、完全に私との二人三脚が始まったわけですが、ちょうど1年前の同時期、レースを目標にすること、経験することの意味もあるのではないかと本大会に出ることも検討しましたが、経験にすらまだ至らないのではないかと思い止まったという当時の記憶がふとよみがえってきました。

それから考えるとこの1年での成長は本当に目を見張るものがあります。

一時は二人だけの練習の毎日にさすがに心が折れるのではないかと危惧さえしたものですが、なんとかお互いにモチベーションを保ちながら春を乗り越え、今では後輩たちからも刺激をもらい、確実に成長を遂げています。

最近は練習を見る度に、まだまだ荒削りながらも力強いストロークや、艇を進める推進力もついてきたなと感じさせてくれています。

そして更なる高みを目指すためにはもう一皮も二皮も剥けてもらわねばなりませんが、今秋から正式にキャプテンを命じ、自身のことだけでなく、後輩のこと、チームのこと、様々な視点で部を引っ張っていってくれるものと期待しています。

そして今回、はじめて1年生同士のコンビで挑んだダブルスカルですが、無念の予選敗退となり、レースを1本で終えてしまいました。

結果だけ見ると不甲斐ないと思われるかもしれませんが、これはレース途中、ブイにオールを弾かれ、艇が完全に停止してしまうアクシデントに見舞われたもので、それだけに勝負の末の結果でないからこそ本人たちにとっても大変悔いが残るものでした。

クルーを結成して以降、意外にも息のあったリズム、ストロークで、悪いところはこれと言って見当たらず、状態自体も雰囲気も決して他に見劣りすることはありませんでした。

だからこその期待もありましたが、やはりレースは生き物。練習でできないことをやることの難しさを改めて知った、というべき結果だったのかもしれません。それは二人のコメントからも随所に窺えました。

ですが、この結果にしても日々の練習だけでは得られない貴重な経験と、そして何よりこれからに必要なことを本人たちが自覚したことになるわけですから、そう悲観するものではないとも感じています。

こうしてレースの回顧をしておきながら、私はと言うと実はレース当日は仕事が重なり、レース自体は鏑木の予選を見終えてその場を後にし、桶川でイベントの主催者として運営を担っておりました。

この日は埼玉県民の日ということもあり埼玉県を代表するプロアマのトップチームを率いたイベントを開催していましたが、そこで改めてスポーツの持つ力、そしてその楽しさの原点を見た気がしました。

このイベントはこれまでスポーツ経験のない子供たちへ初めての競技を体験してもらい、スポーツを始めるためのきっかけ作りと位置付けているわけですが、コーチングスタッフの関わり方や楽しませるという遊び心によって、夢中になる子供達の姿が特に印象的でした。

ボート競技は日々練習に明け暮れ、レースがない特に昨年や今年のような状況では、本当の意味での楽しさを中々見出すことができないのではないかと感じています。

先日の新人戦の予選では、オールが外れるアクシデントに見舞われながらもレースを初めて体験した鈴木からはレースをやってみて、初めてボートの楽しさを味わえたとのコメントがありました。

レースだけでなくとも、きっと皆が初めて水上に浮かんでオールを漕いだ瞬間、これまでにない特別な体験とその感覚にボートの楽しさを覚えた人もきっと多いことでしょう。

自らが漕いで艇が進む、この非日常的な体験こそがボート競技の楽しさの原点ではないかとも思います。

辛い、厳しい練習に明け暮れることも当然必要ながら、その楽しさを忘れず、艇を進めることを追求するという初心も決して忘れてはいけないのだと思います。

特に指導者たるものが自分の理想や考えに固執して、結果だけを追い求め、こなすだけの日々を繰り返させるのではなく、日々の変化と向上するためのきっかけづくりを与えていくことこそ、選手らのやりがいにつながっていくのではないか、そう改めて感じさせてくれる一日でした。

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