進むべき道をもう一度考える

関東ではシルバーウィークに台風直撃とあって、ここ二日間は大雨によって予定を狂わされた方も多くいたのではないでしょうか。

今日は台風一過とも言える青空が朝から広がり、窓の外から見る多摩川沿いの沿道には、多くの人がランニングや散歩を楽しんでいます。

これぞまさに休日の朝。
そう感じさせてくれるだけでも、今の私には気分がいいものです。

先週より自分の体がオーバーフローし、入院して早一週間が経過しました。

ブログで状況を発信したこともあって、早々にお見舞いの連絡をいただいたり、多くの方にご心配をおかけしているところです。

病状としては血液検査の数値は横ばいにあるものの、絶食→流動食→3分粥→5分粥と進んだところで、昨晩はお腹が悲鳴をあげてしまいました。

退院を急ぐあまり、早く点滴を外したいという気持ちとは裏腹に、血管炎で蝕まれている臓器は思った以上に抵抗していて、これでまた振り出しに戻ったような気さえしています。

もうしばらくはかかりそうな不安を抱えながら、それでもこの青々とした景色を眺めていられるだけでも幸せだなと、今朝はクラシックを聴きながらこのブログを書いています。

さて、20日(日)には再集合と再スタートを切るためのミーティングが開催されました。

元さんのお心遣いで現地の様子を音声で共有してくれていましたが、スマートフォンでの集音には限界もあり、途切れ途切れの内容しか入ってこず、途中で断念したため、どのような話に行き着いたかは知る由もありません。

ただ、事前に白川ともすり合わせをしていた「ボート部としてのパーパス、ビジョン」という点を投げかけてもらったところ、部員からのリアクションは思っていた以上に様々な意見が聞かれたように感じました。

もちろん、最終的な結論には至っていないことでしょうし、その場に居合わせられなかった自分がここで口を挟むことも違うのかもしれません。

とはいえ、自分が投げかけたテーマだからこそ、真意と言いますか、今ある胸のうちはきちんと伝えておこうと思います。

現在、当部の方針で議論になっているテーマの一つが、
「インカレを目指すのか、目指さないのか」
という点です。

24年ぶりに最終日進出を成し遂げた部であっても、なおこのテーマが議論されているというのが現状です。

ミーティングでのコメントを聞いている限りでは、部員の中には、

「インカレを目指すことが部の発展に必ずしも必要ではないのでは」

という意見もあったようです。

このテーマを根幹に据えてしまうと、議論が前に進まず、あれこれと時間を費やしてしまうのではないかというのが、私の率直な印象でした。

時には「監督が言っているから…」というフレーズも耳にしましたが、監督が言うから正しいわけではないということは、皆が理解してくれていると信じています。

ただ、方向性を見失ってほしくないため、自分の考えをここに述べておこうと思います。

きっと部員たちが懸念する「インカレを主軸にしたときの不安」は、

「インカレを目指すのはハードルが高い」
「目指せない人が取り残されるのではないか」
「きついイメージがあると新入部員が入ってこない」

といったところにあるのだと思います。

一方で、指導者としては
“インカレで戦うこと”を部の存在意義として掲げるべきだ
という思いがあります。

この二つの価値観は、一見すると対立しているようにも見えます。

しかし私は、これを「会社組織の構図」にとてもよく似ていると感じています。

■ 経営陣と社員は、見ている景色が違う

会社には、必ず「存在意義」があります。
事業を継続し、利益を生み、社会的価値を提供すること。
これは経営陣が絶対に外せないテーマです。

一方で、社員が重視するものは別のところにあります。

働きやすさ。
人間関係。
自由度。
やりがい。
楽しさ。

どちらが正しいという話ではなく、役割が違うから、見ている景色が違う。

体育会ボート部もまったく同じ構造です。

指導者は「インカレで戦う」という存在意義を背負っています。
部員は「楽しく続けたい」「取り残されたくない」という価値観を持っています。

どちらも自然で、どちらも大切です。

■ 組織の目的は揺らがせない。しかし、道筋は柔らかくできる

会社が「利益を追求しなくていい」と言った瞬間、会社は崩壊します。
体育会も同じで、

「インカレを目指さなくていい」と言った瞬間、体育会ではなくなる。

これは厳しいようですが、組織の本質です。

ただし、優れた会社はこうします。

目的は揺らがせない。
しかし、社員が働きやすい仕組みを整える。

体育会ボート部も同じで、パーパスは競技志向のままに、取り残されない仕組みを整えることができる。

■ “共存”ではなく、“役割の明確化”が鍵になる

部員からは「インカレを目指す人と、インカレを目指さない人が共存できるのでは」という意見もあります。

これは“ただ楽しくやりたいだけ”という意味ではなく、インカレを目指さない人も、この部で競技者として活動し、別の大会を目指すという形なら共存できるのではないか

という主張だと理解しています。

その気持ちは自然なことですし、私も理解できます。

しかし、会社で言えば、

利益を追求する部署と、
利益を追求しない部署を、
同じ組織に混ぜるようなものです。

目的が違えば、温度差が生まれ、評価基準も変わり、結果としてどちらも幸せにならない構造になります。

必要なのは「共存」ではなく、“役割の明確化”です。

■ ボート競技の本質は「クルーボート」にある

そしてもう一つ、大切な視点があります。
それは、ボート競技の本質が クルーボート にあるということです。

今の当部は人数が少ないため、シングルスカルを自由に乗れる環境があります。
そのため、

「自分はインカレを目指すからシングルで頑張ればいい」

という“個人競技的な思考”が生まれやすい風土があります。

しかし、本来のボート競技は クルーで戦うスポーツ です。

インカレの出場基準を見ても、シングルやダブルにはエルゴ基準(提出義務)がありますが、フォア以上のクルーボートには提出義務はありません。

つまり、現状で言えば、クルーボートなら、誰でもインカレを目指せるということです。

これは大きな事実です。

しかし、クルーを成立させるには、温度差のある部員の集合体では難しいと思います。

練習の強度。
目標の高さ。
生活リズム。
覚悟。
行動の質。

これらが揃わなければ、クルーは成立しないからです。

だからこそ、同じ価値観を共有し、同じ方向を向いて練習する土台が必要なのだと思うのです。

■ 二層構造ではなく、二段階構造なら、クルーボートも成立する

会社で言えば、

① 全社員が同じ研修を受ける(基礎期)
② 適性や希望に応じて部署が分かれる(選択期)

これが自然です。

ボート部も同じで、

① 全員が基礎を積む
② 競技志向かどうかを選択する
③ 競技志向のメンバーでクルーを組む
④ 非インカレ志向の部員は、別の大会や役割で部に貢献する

これなら、誰も取り残されません。

そして、競技志向のクルーは「インカレで戦う」というパーパスを背負い、非インカレ志向の部員は別の形で競技者として活動できます。

ただし、ここで一つだけ理解してほしいことがあります。

限られたリソースの中では、インカレを目指す者とそうでない者に差が生まれるのは自然なことであるということです。

艇の配分、練習時間、指導の優先度、遠征のサポート。
これらは無限ではありません。

だからこそ、
目的は一つ。
役割は複数。
組織は一つ。

この構造を理解してもらえると、部としての方向性がより明確になるのではないかと思います。

■ 体育会である以上、支援の構造を忘れてはいけない

そしてもう一つ、重要な視点があります。
私たちは「体育会」という枠組みの中で活動しているということです。

体育会である以上、インカレを目指すことは組織としての存在意義です。
大学からもOBからも支援を受けている以上、その期待に応える責任があります。

もし「インカレを目指さない人だけで活動したい」という価値観を優先するのであれば、それは本来“サークル”という別のフィールドが担う役割です。

仮に部員の大半が非インカレ志向になったとき、その活動を誰が支援するでしょうか。

大学は体育会として成果を求めるからこそ予算を出し、OB・OGも「競技に挑む青学ボート部」を応援してくださっています。

インカレを目指さない活動のためにお金を出す構造は存在していません。

もし本当に非インカレ志向だけで活動するのであれば、艇や合宿所の維持費、備品費などは自分たちで賄う必要があります。

しかし、非競技志向のもの、楽しみだけを追求する学生がその負担を望むでしょうか。
望まないからこそ、体育会という枠組みの中で活動し、大学やOBの支援を受けているのが現状なのです。

つまり、非インカレ志向の価値観は尊重できるが、体育会という組織の中では“競技者としての居場所”に差が生まれるのは自然なこと。

これは否定ではなく、組織の構造上の“現実”だということです。

■ 最後に

私は、インカレで戦うことを部の存在意義として掲げたいと思っています。

それは結果を求めるためだけではなく、高い目標に挑むことで得られる成長や絆が、この部の価値そのものだと信じているからです。

しかし同時に、部員一人ひとりの価値観も尊重したい。

だからこそ、目的は揺らがせず、その目的に向かう道筋を柔らかく整えることが必要だと感じています。

そして、ボート競技の本質であるクルーボートを成立させるためにも、同じ価値観を共有し、同じ方向を向いて練習できる土台を整えたいと思います。

この部が、挑戦する者にも、非インカレ志向の者にも、それぞれの居場所がある組織であり続けられるように。

そして、青学らしい「前向きな挑戦文化」を守りながら、進むべき道をもう一度考えていければと思います。

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